今へ続く街道を歩くと

気楽に歩きながら街道の雰囲気を楽しんでいます

鎌倉街道上道(12)大橋から武蔵嵐山 その1

 

2024年1月27日

 

大橋

 

 坂戸駅前からバスに乗って、8:40少し前に終点の大橋バス停に着きました。天気は晴れですが、風も少し強いし、相変わらず寒い朝です。今日は笛吹峠を越えて武蔵嵐山駅まで歩く予定です。8:40にバス停を後にします。

 

 少しだけ南へ歩いて大橋交差点まで戻り、左折して鎌倉街道に入ります。

 

 右側は丘陵地帯、左側は大橋川の作る平地のキワを歩いて行きます。

 

 交差点から10分ほど歩くと左へ入るT字路が見えてきます。

 

 左へ入る道には笛吹通りと表示されています。

 

 鎌倉街道はここを左折して笛吹峠を目指します。

 

 しばらく歩くと、右からのT字路角の擁壁の上に地蔵尊が祀られています。羽黒堂(はぐれどう)と呼ばれています。お歯黒を付けた大将の首が祀られているとか、家来とはぐれた大将が矢に打たれ、祀られているなど、いくつかの謂れが残っています。

 

 その先で道は二又に分かれますが、鎌倉街道は右手直進方向です。

 

 分岐には、小さな道標が立っています。街道に面して「← 今宿及ビ坂戸・・・ →将軍澤ヲ経て鬼・・・」、これまで歩いてきた側から見ると「←玉川ヲ経テ坂東九・・・ →坂東十番・・・」と記されています。

 

 さらに歩くと、右手には海道端沼と言われるため池があります。標柱も立っています。鎌倉街道からくる名前でしょうか。

 

 海道端沼を過ぎると、笛吹峠に向けて緩やかな上り坂が始まります。

 

 さらに上っていきますが、さほどきつくはありません。

 

 すぐに峠にあるトイレの建物が見えてきます。

 

 海道端沼から10分で笛吹峠に到着しました。標高90mに満たない場所にあります。まず目に入るのは、「史跡 笛吹峠 埼玉縣」と記された大きな石標です。

 

 笛吹峠では、鎌倉街道は尾根伝いの道と交差しています。東の道は坂東十番の岩殿観音正法寺へ続く道が、西は坂東九番の慈光寺観音へ通じる道になっていて、この尾根道は巡礼街道とも呼ばれています。先ほどの道標は巡礼街道を示すものでもありました。

 下の写真は岩殿観音へ向かう道です。岩殿観音はここから3km先の東松山市にあります。

 

 西の慈光寺観音へ通じる道です。慈光寺観音は直線で9km行ったときがわ町にあります。

 

 笛吹峠の説明板が立っています。笛吹峠付近では武蔵野合戦と呼ばれる中世の戦がありました。正平7年(1352年)に北畠親房の京都や鎌倉奪還の呼びかけに対して、新田義貞の遺児、義宗や義興が上野で、宗良親王は信州で挙兵しました。新田義宗宗良親王らと合流して、ここ笛吹峠に陣を敷き、小手指ヶ原などで足利尊氏軍と戦いを繰り広げましたが、劣勢に立たされ、最終的にはここ笛吹峠まで退敗せざるを得なくなりました。そして、義宗は越後へ、宗良親王信濃へ落ち延びました。

 一方、新田義興軍は、一時、足利方の鎌倉を占拠しましたが、義宗が敗れたことを知らされ、鎌倉を脱出します。これにより、足利尊氏は鎌倉を制圧することができました。

 笛吹峠の名前は、退敗の折、宗良親王が月明かりを愛でて笛を吹いたことから付けられたと言われています。

 

 笛吹峠から、嵐山町に入ります。その先は切通しを通る下り坂になります。

 

 嵐山町には国蝶のオオムラサキなど多くの蝶が生息しているそうで、「オオムラサキの森」や「蝶の里公園」が整備されています。

 

 林の中を下っていきましたが、視界が開けます。小さな橋の先には切通しが見えます。

 

 沢に沿った谷戸が広がります。

 

 その先で将軍沢の家並みに入ると、庚申塔が北を向いてポツンと立っています。

 

 将軍沢地区です。

 

 右手には日吉神社の鳥居が立っています。坂上田村麻呂にゆかりのある神社で、坂上田村麻呂が東征の際に陣を敷いたという謂れが残っています。

 

 参道には幹回りの太い杉の大木が並んでいます。

 

 左手には「庚申 仙元大日神」と記された石塔が立っています。庚申の文字の上には富士山も描かれていて、富士山信仰の碑のようです。

 

 笛吹峠から下ること25分で平地が見えてきました。

 

 視界が開けて民家が現れると、左側の歩道に縁切橋の標柱が立っています。橋の欄干を模したものでしょう。

 

 さらに、すぐのところにも標識と説明板が立っています。坂上田村麻呂が悪龍退治にこの地に滞在していた際に、彼の妻が心配のあまり訪ねてきました。しかし、田村麻呂は「重要な任務にあたっているのに訪ねてくるとは何事だ」と言い、縁を切ったという故事が残っています。

 

 その先で、県道172号との交差点が見えてきます。

 

 

鎌倉街道上道(12)大橋から武蔵嵐山 その2へ続きます。